日経225先物 はじめてガイド|2026-08 版
第 3 章

証拠金と値洗い

先物の「お金の流れ」はここがすべて。担保としての証拠金、VaR 方式による所要額計算、毎日の値洗い、そして追証の仕組み。

先物取引で最初に戸惑うのが「お金の流れ」です。買っても代金は払わず、代わりに証拠金を預ける。決済していないのに毎日損益が動く。足りなくなると追加を求められる — どれも現物株には無い仕組みです。

この章では、証拠金・値洗い・追証を一つの流れとして理解します。ここが腹落ちすると、第 6 章のリスクの話が「怖い話」ではなく「計算できる話」になります。

証拠金
損失が生じた場合でも決済の履行を確保するための担保のことです。
委託証拠金・取引証拠金
顧客が証券会社に差し入れるのが「委託」、JSCCに預けるのが「取引」証拠金です。
代用有価証券
現金に代わって、株式などの有価証券を担保として使える仕組みです。
VaR 方式
過去のデータからシナリオを作り、99%の損失額をカバーする金額を計算する方法です。
値洗い
毎日建玉の時価評価を行い、損益を受入証拠金の総額に加減することを指します。
追証(おいしょう)
受入証拠金が所要額を下回った際、不足分を補充する行為のことです。

証拠金は「担保」— なぜ必要か

先物取引では、損失が生じても決済の履行が確実にできるようにするために、証拠金が必要です。これは契約の相手方が支払い不能になった場合を想定した安全策です。

比喩: 賃貸住宅の「敷金」のようなものだとイメージしやすいでしょう。家賃(損失)が払えなくなった時の備えとして、最初に一定額預けておく仕組みと同じです。

出典: JPX 証拠金制度

証拠金はどう流れるか — 顧客 → 証券会社 → 清算機関

まず、お客様は契約した証券会社に証拠金を差し入れます。この段階での呼び方が「委託証拠金」です。

区分内容
顧客 → 証券会社現金または有価証券を差し入れる(委託証拠金)
証券会社 → JSCC差換預託として取引証拠金を預ける

次に、証券会社がそのお金を自己の金銭や有価証券に差し替えて、日本証券クリアリング機構(JSCC)へ預け入れます。これを「差換預託」と呼びます。

注意: 証拠金は有価証券でも代用できますが、「現金不足額」が生じた場合は、必ず金銭のみで差し入れる必要があります。
顧客 (あなた) 証券会社 (清算参加者) JSCC (清算機関) 委託証拠金 取引証拠金 (差換預託) 現金のほか有価証券でも代用できる(代用有価証券) ただし現金不足額(値洗いの損失分など)は金銭で差し入れる必要がある
図 3-1 証拠金の流れ。あなたが差し入れた証拠金は証券会社を通じて、最終的に清算機関(JSCC)が決済を保証するための担保になります。

出典: JPX「顧客が差し入れる証拠金」 / JSCC「先物・オプション取引に係る取引証拠金」

いくら必要か — VaR 方式という計算方法

JSCCでは、2023年11月6日に先物・オプションの取引証拠金の計算方法を「SPAN方式」から「VaR方式」へ移行しました。

注意: 古い解説記事には廃止済みの「SPAN方式」が記載されている場合があります。最新制度は必ず確認してください。

VaR(Value at Risk)方式、特にHS-VaRでは過去のマーケットデータからシナリオを作成します。そして、ポートフォリオ全体の損失の99%をカバーする金額として証拠金を算出します。

VaR 方式 =「過去データのシナリオで、損失の 99% をカバーする額」 99% ライン ← 利益側  シナリオごとの損益の分布  損失側 → ここまでの損失を カバーする額=所要額 売りと買いをネットした「ポートフォリオ全体」で計算する(両建てなら証拠金ゼロ)
図 3-2 VaR 方式(HS-VaR)の考え方。2023 年 11 月 6 日に旧 SPAN 方式から移行しました。実際の金額は JSCC 提供のソフトウェアで計算され、証券会社が提示します。

出典: JSCC「新証拠金計算方式(VaR方式)とは」 / JSCC「先物・オプション取引に係る取引証拠金」

値洗い — 毎日、損益が精算される

建玉は日々時価評価され、「計算上の損益額」を受入証拠金の総額に加減します。これが「値洗い(マーキング・トゥー・マーケット)」です。

感覚: 含み損が出ている場合、口座の中で既に効いている状態だと理解してください。実際に決済した瞬間ではなく、毎日少しずつ証拠金残高が減っていくイメージです。
値洗い = 建玉の損益を「毎日」精算して証拠金残高に反映 ラージ 1 枚を 30,000 円で買建てした例(1 円の変動 = 1,000 円) 買建て日 30,000 円 損益 ±0 1 日目の清算値段 29,800 円(−200 円) 評価損 −200,000 円 証拠金残高から差し引き 2 日目の清算値段 30,100 円(+300 円) 累計 +100,000 円 証拠金残高に加算 決済していなくても、含み損益は毎日「受入証拠金の総額」に効いている(価格は説明用の例)
図 3-3 値洗いの例。相場の変動に基づく計算上の損益額が日々、受入証拠金の総額に加減されます。含み損が膨らむと、次の図の「追証」につながります。

出典: JPX 受入証拠金の総額

追証 — 証拠金が足りなくなったら

「受入証拠金の総額」が証拠金所要額を下回った場合(総額の不足額)、または現金不足額が生じた場合に追証が発生します。この際、いずれか大きい額以上の金額を証券会社に差入れる必要があります。

追証 = 受入証拠金の総額が所要額を下回ったら、追加で差し入れ ふだん 受入証拠金の総額 証拠金所要額(VaR 方式で毎日変わる) 所要額以上 → OK 評価損が膨らむと… 目減りした受入証拠金 不足額 → 追証発生 (赤い部分以上の金銭を差し入れ) 期限: 不足が生じた日の翌日、証券会社が指定する日時まで(会社ごとのルールを必ず確認)
図 3-4 追証(おいしょう)の発生。総額の不足額と現金不足額のうち、いずれか大きい額以上の金銭を期限までに差し入れる必要があります。応じられない場合は建玉の決済につながります。
注意: JSCC側では、清算参加者による預託の期限が「翌日午前11時」と定められています。ただし、お客様への具体的な追証ルールは証券会社ごとに異なりますので、必ず自社の規定を確認してください。

出典: JPX「顧客が差し入れる証拠金」 / JSCC「先物・オプション取引に係る取引証拠金」

理解度チェック

証拠金が設定される主な目的は何ですか?

先物やオプションで損失が生じた場合でも、決済の履行を確保するためです。

VaR方式(HS-VaR)では、ポートフォリオの損益額のうち何%をカバーする金額が計算されますか?

99%です。過去のデータからシナリオを作り、その範囲内の損失に備える額として算出します。

追証(証拠金の不足)が発生した場合の差入れ期限はいつまでですか?

不足が生じた日の翌日(休業日に当たるときは順次繰り下げ)までの、証券会社が指定する日時です。

この章の主な出典

免責事項: 本ガイドは日経225先物取引の制度・仕組みを学ぶための学習資料であり、投資勧誘や投資助言を目的としたものではありません。売買の判断はご自身の責任で行ってください。先物取引は差し入れた証拠金を上回る損失が発生するおそれのある取引です。制度・数値は 2026-08 時点で参照した各公式ページに基づいており、変更されることがあります。取引前に必ず取引所・証券会社の最新の公式情報をご確認ください。