先物取引で利益が出たら、確定申告をして税金を納めます。逆に損失が出た年も、申告しておくと翌年以降の税金を減らせる制度があります。つまり勝っても負けても、確定申告の仕組みを知っておくことが味方になります。
この章の内容は、国税庁のタックスアンサー(No.1522・No.1523)と証券会社の税制解説に基づいています。最後の章として、利益・損失それぞれの場合に何をすればよいかを押さえます。
- 申告分離課税
- 特定の所得を給与などの他の所得と分けて計算し、独立した税率で課税する方式です。
- 先物取引に係る雑所得等
- 先物取引の差金等決済による所得が入る税制上の区分。日経225先物の損益はここに入ります。
- 差金等決済
- 現物の受け渡しをせず、差額の授受で取引を終えること。第 5 章の反対売買・SQ 決済がこれにあたります。
- 損益通算
- 同じ区分の中で利益と損失を相殺し、課税対象を小さくできる仕組みです。
- 繰越控除
- その年に引ききれなかった損失を、翌年以後に持ち越して利益から差し引ける制度です。
先物の利益は「申告分離課税」
居住者などが一定の先物取引の差金等決済をした場合、その所得は「先物取引に係る雑所得等」として、給与など他の所得と区分して課税されます。これが申告分離課税です。
対象になるのは、次のような取引の差金等決済です。
- 商品先物取引(商品の受渡しが行われるものを除く)
- 金融商品先物取引等 — 日経225先物・mini・マイクロはここに含まれます
- カバードワラント
「区分して課税される」とは、給与がいくら高くても低くても、先物の利益にかかる税率は変わらない、ということです。
出典: 国税庁 No.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
税率は 20.315%
「先物取引に係る雑所得等」への税率は、所得税 15%・住民税(地方税)5% が基本です。これに、平成 25 年(2013 年)から令和 19 年(2037 年)までの各年分は復興特別所得税(基準所得税額の 2.1% = 所得の 0.315% 相当)が加わり、合計 20.315% になります。
| 内訳 | 税率 |
|---|---|
| 所得税 | 15% |
| 復興特別所得税(所得税額の 2.1%) | 0.315% |
| 住民税 | 5% |
| 合計 | 20.315% |
年間の利益が 50 万円だった場合の税額の目安は次のとおりです(必要経費を考慮しない単純計算)。
500,000 円 × 20.315% = 101,575 円
出典: 国税庁 No.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」 / 松井証券「先物・オプション取引の税制・確定申告」
損益通算 — できる範囲・できない範囲
「先物取引に係る雑所得等」の中に入る取引どうしなら、利益と損失を相殺(損益通算)できます。たとえば日経225先物の利益と FX(外国為替証拠金取引)の損失は、同じ区分なので通算できます。
一方、この区分の外にある所得 — 給与所得や上場株式の譲渡所得など — との損益通算はできません。「先物で出た損は、先物の仲間の利益からしか引けない」と覚えてください。
出典: 国税庁 No.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」 / 国税庁 No.1521「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」 / 松井証券「先物・オプション取引の税制・確定申告」
損失は 3 年間繰り越せる
差金等決済で生じた損失は、翌年以後 3 年間にわたって繰り越し、繰り越した各年の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度として差し引くことができます。
この繰越控除を受けるには手続きの条件があります。損失が生じた年分について申告書付表と計算明細書を添付した確定申告書を提出し、その後も連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出し続ける必要があります。「損した年だけ申告して翌年はしない」と、繰越はつながりません。
出典: 国税庁 No.1523「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」
確定申告の実務 — 必要な書類
先物取引の所得を申告するときに必要な書類は次のとおりです。
- 確定申告書
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- (損失を繰り越す場合)申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
- マイナンバーの記載 + 本人確認書類の提示または写しの添付
出典: 国税庁 No.1522「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」 / 国税庁 No.1523「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」
理解度チェック
先物取引の利益にかかる税率 20.315% の内訳は?
所得税 15% + 復興特別所得税 0.315%(基準所得税額の 2.1%。2037 年まで)+ 住民税 5% です。他の所得の多寡にかかわらず、この一律の税率が適用されます。
FX の利益と日経225先物の損失は通算できますか?
できます。どちらも「先物取引に係る雑所得等」に該当するため、同じ区分内での損益通算が認められています。一方、給与所得や株式の譲渡所得とは通算できません。
損失の繰越控除を受け続けるための条件は何ですか?
損失が出た年分に申告書付表・計算明細書付きの確定申告書を提出し、その後も連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出し続けることです。繰越期間は翌年以後 3 年間です。